男の高収入求人サイトを見て電話
「俺は石田あきらだ。ホモにホラレモンするために電話した。いつでも尻の穴を差し出す覚悟はできている。やる気は満々だ。ヤル気も満々だ。願わくば俺を雇って…」
ブチッ。ツーツー。
電話が切れてしまった。何かおかしいことでも言ったか?
僕の名は石田あきら。どこにでもいる無職でパチンコ中毒の普通の40歳だ。先日長年勤めていたパチ屋をクビになった。新型コロナによるリストラのせいだ。普通だけが取り柄の自分。特殊技能も資格も何もない。今は新たな仕事を探すため、「男の風俗求人サイト」という求人サイトに載っているお店に電話を掛けていたのだったが…。
「1件目は突然切られてしまったというわけだ」
そう。こちらの意見も聞かず、お店の人に電話をガチャ切りされてしまったのだった。
「一体なぜ…」
考えていても仕方がない。気を取り直して次だ。
ただ僕はどういう訳か電話となると強気な喋り方になってしまう癖がある。相手が見えないと自信満々な態度になってしまうのだ。そのせいかもしれない。次は少し控えめに話してみるか。
僕は携帯電話を手に取り、ダイヤルを回した。
「はーい。デリバリーヘルスねるふです。いつのご予約でしょうか?」
女の子の声だった。
デリバリーヘルス「ねるふ」
「予約ではない。ホモにホラレモンするために電話しただけだ」
しまった。ついいつもの調子で話してしまった。
「ホモに掘られる?何言ってるの、あんた。ここは普通のデリヘルよ?」
しばし沈黙があった。ホモサイトではない?どういうことだろう。
「月収60万稼げる、男の高収入風俗求人というサイトを見て電話しただけだが」
僕は少しコミュ障気味に話した。まぁ、普段からコミュ障なのだが。
「男の高収入風俗求人?あー、分かったわ。あれね」
女の子の声が少し上ずった。よく聞くとこの女の子の声は、某人型ロボットアニメ「エ○○ンゲリ〇〇」に出てくるドイツ出身の金髪で強気な女の子に似ているなと思った。
「あなた、仕事を探しているの?」
「そうだ。3日前に東京都内パチンコ店をクビになったから早急に仕事を所望している。ただそれだけだ」
僕は自分の近況を簡潔に分かりやすく説明した。受話器からは少し大きめの音量で鳴っているユーロビートが聞こえた。
「なるほどね。まぁその喋り方だと会社になんて馴染めなさそうよね」
「なんか言ったか?」
女の子が何か言ったが、声が小さくてよく聞こえなかった。
「な、なんでもないわよ。でもデリヘルドライバーなら適任かもね。うん」
また女の子が聞こえない声で独り言を呟いた。
「まぁ、いいでしょう。あなた仕事を探してるってことでいいのよね?」
「もちろんだ」
ふふっ、と彼女が少し微笑んだような気がした。
「じゃあ、明日面接に来なさいよ。ちょうど人も足りてなかったし、なんとかなるかもしれないわよ。ぶっちゃけ楽で稼げる仕事だと思うし」
楽で稼げる仕事だと?
「何時だ?」
「そうね。夕方18時でどう?」
特に予定はなかった。
「分かった。行くことにしよう」
「はーい。なんかあんたと喋っていると一体どっちがお願いしてるのか分からなくなって来るわ…。まぁでもこれくらい変わってる人の方が面白いかも」
「何か言ったか?」
「なんでもないわよ。とにかく時間だけは守ってね」
「分かった。それでは失礼する」
僕は電話を切った。
デリヘルドライバー面接が決まる
デリヘルドライバーという仕事は知らない。でも楽で稼げるのならばそれにこしたことはない。願ったり叶ったりだ。そしてなにより、条件が合わなければ働かなければいいだけなのだ。
それよりも僕は電話口の女の子が気になった。
完全にあのアニメのア○カの声だった。
彼女が面接官で経営者なのだろうか?
声の感じを思い出したらまた勃ってきた。
やれやれ。
僕は射精した。