突然の告白
「実は私も夜のお仕事の経験があるから分かるんだけどさ」
画面上のVtuberイカリユイの配信を見ている俺。イカリユイが突然呟いた言葉に驚き、一瞬時が止まったような気がした。
なんだって。
イカリユイが夜の仕事の経験があるだって…。そんな馬鹿な彼女はVtuber。バーチャルな存在じゃないかと僕は思った。要するに自分の頭の中が混乱していたというわけだ。
だってそうだ。俺、石田あきらももう40歳を迎えたいい大人だ。このVtuberがバーチャルの存在ではないということはなんとなく分かっている。ただそれを理解することを脳が拒否していた。それだけの話なのだ。
※Vtuberはバーチャルな存在ではありません。アニメに声を当てているだけ。つまり中に声優がいます。
それくらいは許してくれ。俺は現実では疲れ切ってしまったしがない借金もち、石田あきら40歳なのだ。
改めて僕の名は石田あきら。どこにでもいるVtuber中毒の一般的な40歳デリヘルドライバーだ。パチ屋をクビになったため「男の風俗求人サイト」という求人サイトに載っているお店に電話を掛けてデリヘルドライバーとなった。デリヘル嬢とトラブルになりお気に入りのVtuberに投げ銭して相談したのだが…。
アスカとレイについて
「夜のお仕事をしている女の子と仲良くなる方法はね。簡単なことだよ。とっても難しいことだけど」
一体どっちなんだと僕は思ったが、画面に呟いても仕方ないので、ユイの次の言葉を待った。
「それはね、話をちゃんとしっかり聞いてあげること」
話をしっかり?僕はまた混乱した。当たり前のことじゃないかと思ったからだ。
「アキラ君、あたり前のことだと思ったでしょう?」
図星だった。ユイは俺の考えなんてお見通しらしい。なんてこった、パンナコッタ、マイハニー。僕の心はブロークンハート。お前のすべてにメロメロだよ。と僕はおもった。
「人の話を聞くというのはとても難しいことなんだよ。誰にでもできるけど」
「私はね、私の話をきちんと聞いてくれる人は女友達だけで、男の人ではまだないんだ。もちろん男の人と会ったことがないわけじゃない。みんな私の話を”聞く”だけ。本当に聞きたいと思っているわけではないんだ」
どういうことだ?ユイの話の要点がいまいちつかめない。俺はさっきから脳をフル回転させ、ちょっとだけ疲れてきた。コーラが飲みたいと思った。
「男の人はね。女の子とあんなことをしたいだけで、そのために仕方なく話を聞いているんだ。でもそういうのはね、ある程度傷ついた経験がある女の人には丸分かりなの」
「そしてね、夜のお仕事をしている女の子はほぼ例外なくみんな傷ついているんだ。だからもし、アキラ君が真剣に女の子と仲良くしたいと思っているなら、それは伝わるよ。必ず」
ー夜のお仕事をしている女の子は傷ついている。
これは似たようなことを前にアスカからも言われた気がする。本当にそうだとしたらレイも…。
成長の前兆
「あとくれぐれも気をつけてほしいのは過去の話をあんまり詮索しないほうがいいかもね」
過去の話を聞く。これの何が悪いんだと思った。俺はレイの幼少期から今までを知っているわけではない。過去の話を聞くのは当然だ。何も悪いことではないと思っていた。
「女の子の過去ってのは色々あるの。もし、この意味が分からなくてもいい。とにかく、過去を詮索したり、しつこく聞くのはだめなんだからね」
やはりユイは俺のことをよく分かっている。オーケー。ユイ。そこまで言われたら俺ももう聞かないさ。だからもう少し、そのとろけるような可愛い声をもっと俺の耳に響かせてくれ。
数分後、私は射精した。